論評

Commentary

Oギャラリー個展状況

山田 久美子 さんの作品『うたげ』に心惹かれて足を運びました

東京・銀座のOギャラリーで5月23日まで開催されていた、
山田 久美子 展に足を運びました。

ギャラリーからお送りいただいた案内はがきには、<融合への切望>という副題、
そして『うたげ』という今年制作された作品が掲載されています。
パネルに麻紙、岩絵具、金箔とあるので日本画ということになります。
最初に目がいくのは、画面左上の大輪の赤い花。
そのすぐ下にそれよりやや小ぶりの白い花も描かれています。
赤い花が顔を代替するような格好で、人間の女性と思われる身体が、
横たわるような姿で描かれています。白い花には身体も何も付いていませんが、
そこには男性の顔があってもいいし、ペットがいてもいいし、何かオブジェがあってもいい、そんな感じがしてきます。
あるいは女性の顔に見立てても、それはそれで面白いストーリーが生まれるかもしれません。
背景全体を金箔が覆っているのも印象的です。

作家からはこんなメッセージをいただいています。
「人は一人では生きられない。だが孤独に耐えなければならない」がコンセプトです。
孤独に耐えられない時、人は強烈に何かを求めます。
自分を癒してくれるもの、自分を満足させてくれるもの。
でもそれらは全て自分の中にあるのです。
モチーフは人と華ですが、華も何かを求めるように咲き誇ります。
見る人の心を揺るがすように、精いっぱい咲き誇り、一人散っていきます。
どちらも私にとって大切な表現方法です。
人も華も孤独に耐えながら、何かを求め続けます。

実際にギャラリーでお話を伺ってみました。
「かなり昔のことになりますが、大切な友人が癌で永眠してしまうという出来事がありました。
その時に、バラの成分が癌をはじめとした疾病に対して、
何らかの良い効果をもたらすということを聞き、
それ以来画面に取り入れるようになっています。
花と書くと少し軽い感じになるので、私は華という字を使っています」。
なるほどそんな言葉を裏づけるように、蘭とか百合とかの華を使った絵もありますが、
大半はバラ、それも暖色系の元気がもらえそうな大輪の華が使われています。
一方の「人」の方ですが、身体まで描かれたものはすべて女性のようです。
「意識して自分自身を投影しているつもりはありませんが、
やはりどこかで自分の気持ちが反映されているのかもしれません」。
美術大学や大学院で日本画を専攻した山田さん。
しかしその活躍の場は国内だけでなく、米国(ニューヨーク)やマレーシアなど、
多岐にわたっています。
ブリスベン国際美術展にて、東洋芸術家功労賞を受賞したことも。
新型ウィルスで渡航どころか国内移動もままならない日々ですが、今後も幅広い活躍を楽しみにしたいところです。

~『うたげ』はしばらくの間、以下のサイトで見られると思います
Oギャラリー O gallery TOKYOはInstagramを利用しています:「山田久美子展、会場風景動画です。テーマは「融合への切望」、日本画の作品です。」

文:加藤良平